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解説 水由 章
※随時更新予定
作品データに関する注釈
※1 Single8・Super8
双方とも8㎜フィルムの規格
※2 silent・mg・opt
フィルム上の音声トラックに関する規格の略称 silent 無声/mg(magnet) 磁気記録/opt(optical) 光学記録
(FMF福岡)
例 1985/single8※1/silent※2/color/3min.
A1
坂の情景
1985/single8/silent/color/3min.
坂を登る男。男は女とすれ違う。男は或る人を殺めるために。
登場人物の配置、繰り返しのカット、高速度撮影を多用など、場面構成の効果を試みた作品。
A2
ルーマニアの影
1991/Super8/mg/color/4min.
1989年12月チャウシェスク政権打倒の蜂起が起こった街ティミショアラ。ルーマニア革命から1年半余り経ったティミショアラ街は、壁の弾痕と淀んだ空気と水、未だに物不足で疲弊していた。市民が歌った「オレオレオレ、チャウシェスクはもういない」の次はどうなるのだろうか?

A3
ジュガシヴィリの亡霊
1991/ single8/mg/color/3min.
ジュガシヴィリはスターリンの姓・名字。初めて降り立ったモスクワは極寒で太陽を目にする時間も極わずかだった。70年間続いたソビエト連邦は、未だジュガシヴィリの亡霊に苛まれているかのようだった。
A4
轍のなかで
1991/ single8/mg/color/11min.
二十代前半の頃は就職活動などとは無縁に成田空港反対運動に末端で関わっていた。すでに空港が開港し反対同盟が分裂していた時期に、集会、援農、鉄塔小屋での泊り込みをする私は、世間からみれば化石のような存在だったであろう。運動から遠ざかり成田空港を使って海外へ行った現実と、自らの左足にまつわる事柄を挙げながら、仕事を辞めて次の展開が見通せない時期の自分自身を吐露した作品。
A5
押し続けた時間
1989/16mm/silent/color/7min
シネマテークのスタッフとして仕事に従事していると自分の作品を創る時間がなかなか取れないため、シネマテークで「ニューイメージ宣言1989」という自ら立てた企画のなかで初公開した作品。わずかなプライベートの時間に長時間露光撮影のためシャッターを押し続けた親指の窪みがこの映画の裏主人公かもしれない。
A6
或る情景・都市河川
1993/16mm/silent/B&W/6min
井の頭公園を水源とし、隅田川へ注ぐ神田川。浅草橋、江戸川橋、水道橋などはこの川に架かる橋の名称である。江戸庶民の生活用水という本来の使命を全うし終えた都市河川の姿をカメラに収めたい衝動に駆られたのだった。片道約25キロにも及ぶこの川を何度か往復するうちに、体から吹き出たたくさんの汗、三脚を抱えた右肩のあざ、足の指にできた水ぶくれ、などが自己流の神田川への接近方法だった。大部分をコマ撮りで構成したアニメーション作品でもある。

A8
水光色
2002/16mm/silent/color/7min
当時住んでいた平屋は野川という小さな川沿いのすぐそばだった。毎日目にする野川の水面に映る光をどうにか映画にできないか? と 考えたときに生まれたのがこの作品だった。自宅から半径100m足らずの小空間から如何にイメージを外へ拡げられるかを考えていた。水と光ばかりを撮るスタイルがなんとなく確立したようだ。

A9
ONE’S WILL
2007/16mm/silent/color/10min
8mmフィルムで育った私としては、フィルムメディアが存亡の時期に、自分の新作をフィルムメディアで完成させるのは至極当然のことである。金銭的、利便的などでフィルムからビデオに移行した人が多いなか、編集や自家現像などで物質に触れられ、映画フィルムの特徴である粒子や質感を自作からは放棄できない。また、私の作品はここ10年音声をつけていない。音声がもつトーンや感覚が、映像に逆作用してしまう恐れを避けるためである。私の映像に心地よいリズムやノイズは必要ない。この作品では、8mmを素材にオプチカルプリンターを使って16mmにブローアップしている。8mmフィルムの質感をあえて、自家現像の場面を挿入することによって、このメディア存亡の時期に「自分の意志」(ONE'S WILL)と「自分の意地」を提示した作品。
A11
IN FOG
2010/16mm/silent,opt/color/5min
本作は、意図的な光線びきとカブリ(露光しなかった部分に生じる黒い曇り)から構成した映画である。本来は映画の撮影ではNGとなる部分を、イレギュラーな撮影と自家現像によってあえてつくりあげることで、多様な色調や画面ノイズ(ムラ、傷、汚れ)がスクリーン上をうごめく。小さなタンクで現像するため、10数フィート程しか現像できない手間を逆に利点とした制作スタイルをとった。現像あがりから新たな光線びきやカブリの方法を考え実践していく~毎回がまさに実験だった。
A12
SUBTLETY
2012/16mm/silent/color/5min
「映画フィルム」というデジタル信号ではない<物質>としてのメディアを再認識させる作品。撮影フィルムと上映フィルムを密着あるいは非密着させ、暗室で光をあてて像を記録させるフォトグラム手法を使い、かつアナログノイズを自覚させるために自家現像をおこなっている。タイトルの「SUBTLETY」は微妙、繊細、敏感などの意味がある。
B1
サンライト・イズ・ア・ミラクル
2007/Super8/silent/color/3min
映画は自然光に限る! 自然光は太陽の恵みである。太陽はミラクルな存在なのだ!そんな太陽(サンライト)に敬意をあらわした作品。

B3
瞬息シリーズ
8mm フィルムの1マガジンを無編集、つまりカメラ内編集で作品化することを条件に作り続けているシリーズ。「瞬息」とは、人間がまばたきするわずかな間の意がある。ノーカット無編集で何が表現できるか? 多重露光を多用した、ホーム・ムービー風の実験映画。
B3-8
瞬息8
2005/Single8/silent/color/5min
「瞬息」シリーズの第8弾。
武蔵野はらっぱ祭りが開催される、武蔵野公園くじら山下はらっぱ周辺の初夏に撮影した一篇。『瞬息3』と同様に、休日の午後に家族と過ごした1日を多重露光でつづっていく。野川の水面に映った光と、ローアングルで草むらを移動するカットが効果的に作用している。
『瞬息5』とは全く異なったシングル8本来の青緑画面が、晴れた初夏の緑の雰囲気を醸し出している。
撮影は2001年。
B3-9
瞬息9
2005/Single8/silent/color/5min
「瞬息」シリーズの第8弾。
武蔵野はらっぱ祭りが開催される、武蔵野公園くじら山下はらっぱ周辺の初夏に撮影した一篇。『瞬息3』と同様に、休日の午後に家族と過ごした1日を多重露光でつづっていく。野川の水面に映った光と、ローアングルで草むらを移動するカットが効果的に作用している。
『瞬息5』とは全く異なったシングル8本来の青緑画面が、晴れた初夏の緑の雰囲気を醸し出している。
撮影は2001年。

B3-10
瞬息10
2005/8mm/silent/color/5min
8mm フィルムの1マガジンを無編集、つまりカメラ内編集で作品化することを条件に作り続けた「瞬息」シリーズ。人間がまばたきするわずかな間(瞬息)に垣間見る一瞬の風景。太陽が明滅するさまは、まばたきのようでもあり、人間が呼吸(息)をしているようでもある。フィルムの光と影。その偶然と必然の面白さを出すために無編集とした。子どもと過ごした地元での時間から、スタン・ブラッケージの葬儀でカナダのビクトリアで撮影した場面、子どもが協力してくれなくなった時間へ。「瞬息」シリーズとして同様のコンセプトで撮影した作品が16年間で全10作品を数えた。
B5
BEYOND CONTROL
2014/16mm/silent/color/5min
日常生活、東京オリンピック2020のみならず、作品表現においても表現活動の領域、内容までもコントロールしようとする「UNDER CONTROL(管理下)」の風潮に対して、期限切れ撮影フィルム・現像液、アブノーマルな自家現像、フィルムへの直接加工(傷、汚れ)といったコントロールの向こう側での作業で生み出されたノイズによって、いかに映画フィルムの作品製作を続けていくのかを、抵抗の意味で自分自身に問うた作品。
B6
CROSSING IMAGE
2016/16mm/silent/color/5min
期限切れのカラーネガフィルムで撮影し、カラーリバーサル用のE-6現像、いわゆるクロスプロセスに よる自家現像を経た映画である。意思を持たない能面な鉄塔が、ネガ像からゆっくりと微妙にポジ像に変わっていく。このエフェクトは、現像時の<1.現像時間の長短/2.現像液温度の高低/3.攪拌の有無/ 4.現像液の使用頻度の差異>などの、効果的な割合からうまれたものである。

B7
木綿たり/MOMENTARY
2017-18/16mm/silent/color/5min
本作品は、映画フィルムの特徴である色味、階調、ラティチュード、質感、粒状性を再認識させる作品である。 撮影は16mmボレックスカメラを使い、100 フィート巻きのフィルムを撮影してはカメラ内で巻き戻しを繰り返し、幾重にも像を露光させる方法をとっている。露出がアンダーな水面(みなも)の流れに陽光や草花、タイトルの像などが重なっていく。像は二つから五つと重なっては消え、また重なることを繰り返す。安易なオプチカル合成処理で見受けられるよ うな、違和感を伴わないアナログ本来のナチュラルな色味と質感、階調を維持したまま像は重なり映画は進んでいく。
B8
Perception
2019/16mm/silent/B&W/8min
全編カメラ内での多重露光で構成している。使用したカメラ(SCOOPIC)は巻き戻し機能が付いていないため、撮影フィルムを最後まで廻しきったあとで、簡易なダークバック内でカメラからフィルムを取り出し、手動で最初まで巻き戻しては撮影するというイレギュラー な手法を繰り返している。本作は、白と黒、光と影、陽と陰などの映像の対比を、白黒映像・無音というスタイルから、映画を見る人それぞれが知覚(Perception)を鋭敏にさせ、「映画をみるという行為」を能動的に作用することを狙っている。
